父親の趣味再開ガイド|10年ぶりに自転車にまたがった話
仕事と育児に追われているうちに、自分の趣味から離れて何年も経っていた──そんなパパは少なくない。
でも、ある日ふと「自分にもこういう時間があったな」と思い出すことがある。
10年ぶりに自転車にまたがった僕の体験から、無理なく趣味を再開するための小さなステップを紹介します。
趣味があった、ということを忘れていた
ある日、ふと押し入れの奥にしまったロードバイクを見つけた。
最後に乗ったのは、結婚する前。仕事が忙しくなり、結婚し、子どもが生まれ、休日は家族の時間になり、いつの間にか自転車の存在を忘れていた。
タイヤは空気が抜け、フレームには薄くホコリがかぶっていた。それを見ながら、自分の中の何かが少しだけ揺らいだ。
「自分には、こういう趣味があったんだった」
それは小さな気づきだった。でも、その瞬間に気づいた。子どもが生まれてからの10年間、僕は自分の趣味を持っていなかった。仕事と育児と家事だけで、人生の枠が埋まっていた。
「趣味がない自分」を肯定もできた
誤解のないように先に書いておくと、「趣味がない自分」が悪いとは思っていない。
子育て中の数年は、趣味どころじゃない時期がある。睡眠時間の確保で精一杯の日もある。その時期に趣味を続けようとして、家族に負担をかけたら本末転倒だ。
だから、趣味から離れていた自分を責める必要はない。それは、その時期に必要な選択だった。
ただ、子どもが少しずつ手を離れてきた今、押し入れのロードバイクを見て、「そろそろ、戻してもいいんじゃないか」と思った。それだけのことだ。
10年ぶりにまたがって、気づいたこと
久しぶりに自転車にまたがった日のことを、よく覚えている。
タイヤに空気を入れ直して、チェーンに油をさして、ヘルメットを引っ張り出した。家から数キロだけ走ってみる。それすら緊張した。
でも、ペダルを踏んだ瞬間、思った以上に体が覚えていた。10年のブランクが、嘘みたいに消えた。
そして、走り始めて10分くらいで気づいた。
「あ、自分、こういう時間が好きだったんだ」
風の音、変速の感触、心拍が上がる感じ、街並みが流れていく速さ。仕事や育児の文脈の外で、ただ自分が好きだった感覚。それが、ちゃんとそこにあった。
帰宅したとき、不思議と頭がすっきりしていた。10年間、僕に足りなかったのは”これ”だったのかもしれない、と思った。
趣味再開でつまずきやすいポイント
ただ、再開してすぐすべてがうまくいったわけじゃない。途中で何度も挫けかけた。共通する”つまずきポイント”を共有したい。
1. 昔のレベルを取り戻そうとする
10年前は週3で50キロ走っていた。だから今もそれくらいやらなきゃ、と思いがちだ。
でも、体力も時間も10年前とは違う。昔の自分と比較すると、たいてい落胆する。「昔はもっと走れたのに」と思った瞬間、楽しさが消える。
過去の自分と勝負しない。今の自分が走れる距離を、今の自分のペースで楽しむ。これに尽きる。
2. 道具をいきなりアップデートしようとする
久しぶりに乗ると、「もっといいバイクにしようかな」「ヘルメットも新しくしようかな」と物欲が湧く。気持ちは分かる。
でも、最初に道具を買い込むと、それ自体が”準備のタスク”になって、走るのが遅れる。古い道具で、まずは数回乗ってみる。本当に欲しいものは、しばらく乗ってから見えてくる。
3. SNSで他人と比較する
再開すると、どうしてもSNSで他のサイクリストの投稿を見たくなる。が、これがいちばんの罠だ。
100キロ走ってる人、レースに出てる人、高級バイクを乗りこなしている人。比較すると、自分の小さな再開が「物足りない」と感じてしまう。
SNSは見ないか、見る時間を区切る。自分のペースだけを大事にする。
4. いきなり毎週走ろうとする
「再開するからには習慣にしないと」と意気込みすぎると、続かない。週末ごとにスケジュールを組んで、雨が降ったら落ち込んで、家族の予定が入ったらイライラする。
最初は「気が向いた日だけ」でいい。月に1回でも構わない。”再開した”という事実が大事なのであって、頻度は後から決まる。
父親が趣味を再開するための3つのコツ
実際に再開してみて、これは大事だなと思ったことを3つだけ。
短時間から始める
最初から半日のライドをしようとしない。1時間。慣れたら2時間。少しずつ伸ばす。
短時間なら、家族にも負担をかけにくい。妻に「1時間だけ走ってくる」と言うのと、「半日いない」と言うのとでは、受け取られ方がまるで違う。
家族と相談しながら、頻度を上げる
再開してしばらくは、自分一人で完結しようとせず、家族にも報告する。
「来週は土曜の朝、2時間だけもらえないかな」と相談する。許可をもらいに行くというより、家族の予定との調整を一緒にする感覚。
これを続けていると、家族の中で「お父さんは自転車に乗る人」という認識が定着していく。趣味が、自分だけの秘密じゃなく、家族公認の活動になっていく。
子どもに見せる
これが意外と効いた。子どもの前で、自転車に出かける姿を見せる。装備を整える姿、戻ってきて満足げに自転車を拭いている姿。
子どもは、親が好きなことに夢中になっている姿を見ているのが、結構好きらしい。「お父さん、楽しそうだね」と言われた日は、嬉しくて泣きそうになった。
趣味は、自分だけのものじゃない。家族にとっても、「お父さんが楽しそうにしている」というのは、大切な風景になる。
自転車以外の選択肢も含めて
ここまで自転車の話をしてきたけれど、再開するべき趣味は何でもいい。
僕の場合はたまたま自転車だった。読書だった人、ギターだった人、釣りだった人、ランニングだった人。それぞれに、過去に好きだったものがあるはずだ。
「子どもが生まれる前、何が好きだったか」を思い出してみてほしい。完璧に思い出せなくても、押し入れに眠っている道具を見れば、過去の自分と再会できる。
また、「再開」じゃなくて「新しく始める」でも、もちろんいい。子育てで会えなかった自分と再会するのも、まだ知らない自分に出会うのも、どちらも素敵な選択だと思う。
まとめ:父親が趣味を持つことは、家族のためにもなる
10年ぶりに自転車にまたがった日から、何かが変わった。
走った日の翌日、子どもへの接し方が穏やかになる。妻との会話のテンションが少し違う。仕事のメールへの反応も落ち着いている。
自分が満たされていると、家族にも優しくなれる。これは間違いない真実だった。
父親が趣味を持つことは、わがままじゃない。むしろ、家族にとっても価値のある選択だ。
もし押し入れの奥に、過去の自分の道具が眠っているなら、引っ張り出してみてほしい。10年ぶりでも、20年ぶりでも、再開はいつだってできる。
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